イメージの表現を学んでいます　←（過去　日々、絵の探究をしてみる）

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「私一人でも、平気なの。無事に帰って、お姉さまに認めてもらいたい……な」

　うす暗い樹海。

　昼だというのに、陽の光がまるで差さない。はるか頭上では木の枝が複雑に絡み合い、
陽光を遮っている。樹木がみつに生え並び、コケがひしめき合う。落ち葉が地面に張りつ
いている。乱雑に生えた草がカミラの太ももに触れた。

　冷たい雫が肌にまとわりつく。歩くだけで、靴が濡れてしまう。

――それにしても……素敵な場所ね。こういう人が来なさそうな場所って、ぞくぞくする
な。

　狭いけもの道をたどり、カミラは目的の場所をめざす。クリスティンによれば、このけ
もの道の先、奥深くに行けばいいらしい。
　どこからか獣の泣き声がこだまする。頭上からは黒い鳥が不吉に鳴いていた。

　樹海のなかばほど進んだところで、まわりの木々ががさがさとしなった。たくさんの獣が
ぞろぞろ表われる。重い足取りを踏みならし、カミラをおもむろに取り囲んだ。

　人間よりもはるかにたくましい体躯をしている。中途半端に育った樹木よりも大きく、
身体からは筋肉が盛大に盛りあがる。皮からは青い血管が浮かび上がり、石のように引き
締まっている。左右の頭からは角が生え、カミラを威嚇する。

　口からあやしい息を吐き出した。

――来たのね。予想よりも遅いんじゃないの？

　不敵に頬の筋肉をひきつらせ、カミラは構える。タクトを突きだし、正眼に相手を見据
えた。

　人型の獣は大音量で吠えると、カミラに突進する。巨大な手を振りかざし、カミラに肉
薄する。目にもとまらぬ速さで腕を振り下ろした。

　カミラの手から宙に魔法陣が浮かぶ。あらかじめセットしておいた術で、獣の凶手から
逃れたのだ。とんっと、枝の上にテレポートする。
　標的をうしなった腕力は空を切る。腕は地面を抉り、大きな穴を開けた。激しい砂埃が
舞う。

「こっち」

　すこし離れた場所で、カミラは悠然と佇む。木の枝がしなった。カミラは敵を見下ろし、
艶やかなしぐさで挑発する。たおやかな手で、獣たちを招くようなポーズを取った。

「グゥォォォオォォォォォォォォォォォォォッ！」

　獣たちはさざめきたち、脅そうとしてくる。
　カミラの背後から黒い影が舞いおりた。頭上から、すさまじい風のうなりが渦巻く。
　カミラは反射的に手を上にかかげた。

　手の甲からは紫の霧が立ちのぼる。霧が獣をつつみこんだ。その瞬間、獣の身体が腐り始
める。皮は裂け、逞しい筋肉が縮んでいく。眼窩は落ち窪み、ぼとぼとと筋肉が剥がれおち
ていく。

　生々しい鮮血が降り注いだ。カミラはうっとりと血の雨に酔いしれ、相手の命がとぎれる
瞬間を待ち望んだ。

――素敵……生命が終わるのって、きれい……

　獣は未練たらしく吠え、カミラに殴りかかえる。
　触れることさえ叶わない。

　カミラの肌に獣がふれる寸前、腕が粉々になった。後には骨しか残らない。ぼとぼとと骨
が地面におちる。残りの獣たちに骨がぶつかると、それぞれ戸惑いの声をあげる。

　はるか樹木の上。余裕のカミラは高みから獣たちを歓迎する。

「みなさん、立派な体格をしてるのね。でも、相手がわるかったかな。じっくり、ゆっくり
――あなたたちの身に、恐怖をきざみ込まないと――」

　ぶんっと、テレポートしたカミラは獣の背後をとった。お腹の底から笑いがこみあげてく
る。

「――さぁ、あなたたちの終焉に祝福を」