足でふみゅふみゅ♡ 5
続きを更新しました。
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鉛筆の走る音がこだましている。人口密度のおおい教室では、生徒たちがノートに板書している。なかには、寝ている人もいた。
授業の終わりを告げる鐘が鳴った。
化学の教師はチョークをおくと、教室から退出していく。張りつめた空気が、やわらいだ。生徒たちが緊張をゆるめて、談笑を始め出した。がやがやとにぎやかさが、クラス中に伝播していく。
――はやく購買に行かないと。あそこって競争率が高いんだよな。
授業が終わったら、すぐに購買に行ったほうがいいのだ。そうでもしないと、すさまじい数の人で込み合ってしまう。
イスから立ち上がろうとした時だった。喧騒にまぎれて、後ろから俊介の肩がぽんっと叩かられた。後ろを振り返ると、そこには太一がいた。太一は人懐っこそうな笑みを浮かべている。
「よっ、俊介」
俊介よりも、太一は頭一つ分大きかった。いっしょに立っているときは、俊介が見上げる形になる。
「あぁ、太一か。さっきの授業はずいぶん、眠かったな」
「あいにく俺は化学、好きだが」
「そうでした」
太一の成績はいいほうで、とくに化学の偏差値は全国模試でもトップクラスだった。太一とくらべてもあんまりよろしくないので、最近は気にしないようにしている。
俊介は立ち上がると、ぐっと伸びをした。
「なぁ、俊介。実は頼みがあるんだが」
「できる範囲で聞くよ」
「それは助かる。そんなにひどい要求はしないから、安心してくれ」
「ほんとかよ」
俊介は苦笑した。
「実はこの後外せない用事が入ってしまったんだ。もしよければ、購買でなにか買っておいてくれないか?」
「それぐらいなら、大丈夫だよ」
「まじか、恩に着るぞ」
太一は満面に浮かべると、ポンっとスキンシップをしてきた。ポケットから財布を取り出し、俊介に英世さんを渡してくる。
「これで買っておいてくれ。ちゃんと釣りは返してくれよ」
「了解。レシートは改ざんしておくから」
「ふざけるな」
太一が突っ込んでいる横で、俊介は自分の財布に英世さんをしまった。
クラスメイト達は机を並べてお昼を食べたり、教室から出ていったりする。出遅れた感じがするが、友達からの頼みごとなら仕方なかった。
友達といっても、奇妙な関係にはちがいない。太一の行動は、一般のそれとはかけ離れている。クラスに馴染むのは上手いが、太一の行動についていける人はすくない。なんの因果か、太一とは息が合った。たまにストレスも溜まるが。
「おっと、じゃあ俺はここらで失礼するぞ。時間も押してることだし」
「安心して行ってきなよ。昼ごはんはちゃんと確保しておく」
太一はしゅたっと手をあげると、そそくさと教室を出て行ってしまった。
あとに残された俊介は、購買に向かった。さいわいにまだ混雑はそれほどしていなかった。まばらに人のいる廊下をかき分け、目的地にやってきた。俊介はさっさと品物を買って、外に出る。そこにはたくさんの人だかりができていて、ぎゅうぎゅう詰めだった。
――こういう人並みってのは、苦手なんだよな……遭遇しなくて、ほんとよかった。さて、どこに行こうか。
今日は晴天だ。すきとおった青空がまぶしい。
こういう日は、お日様の下にいたいものだ。わざわざ教室で食べるのももったいないなかった。せっかくだから、外で食べたい。
ぶらぶらと校庭を歩きまわっていると、いい場所を発見した。木々にかこまれたところに、ベンチが備え付けらている。今日はあんまり人がいないようだった。ベンチに腰を下ろすと、袋の中からパンを取り出した。
――それにしても、買いすぎたかな。
太一がどのぐらい食べるのか大体把握しているつもりだったけど、予定よりもおおく買ってしまった。考える時間ももったいなかったし、あれもこれもと手を出してしまった。――太一なら、全部食べてくれるだろう。
都合のわるいことを太一に押しつけて、俊介はパンを頬張った。
ざぁざぁと、心地いい秋風が吹きわたる。
しばらくパンを食べていると、見知った顔が目に入った。葉月だった。はぁっとため息をついた葉月は、ぐった
りうなだれている。俊介を発見すると、バツの悪そうに顔をしかめた。俊介は平然を装い、葉月に手をふった。
「……本日、二度目だよ。ひょっとして、私の後をつけてるの?」
「失礼な。さきにここにいたのは、こっちだ。葉月のほうが後出しだろ」
「呑気だよね……」
葉月はジト目を送ってくる。ふいに葉月のお腹から、ぐーっと鈍い音が鳴った。俊介が疑問符を浮かべている
と、葉月の頬はピンクに染まった。葉月は申し訳なさそうに縮こまると、さっとお腹を両手でおさえた。
「お腹すいてるの?」
「すいてるね」
ちんっと、沈黙が続いた。
葉月はどこかに視線を泳がしているし、俊介は手持無沙汰になった。話を切り出しづらかった。まわりでは、やってきた生徒たちが黄色いを声をあげている。さすがにこのままでいけないだろうし、俊介から話題をもちかけることにした。
「よかったら食べる、このパン?」
「いいの!?」
葉月はきらきらと目を輝かせると、ぐいっと俊介の近くに接近してきた。シャンプーの芳香が、俊也の鼻をくすぐる。香恋の無防備な笑顔に、俊介はドギマギしてしまった。はっと冷静になった葉月は、俊介とから距離を置いた。
俊介はこほんと咳をした。動揺を隠すようにして、気持ちを切り替えたのだ。
「やっ、やっぱり遠慮しとくよ。俊介が自分で食べなよ。私は……そうだ、近くのコンビニに行くから」
葉月はぶんぶんと両手を左右にふった。口では断わっているけど、視線はパンにそそがれている。
「構わないよ。買い過ぎて、困ってたところなんだ。だいだい……三人分ぐらい買ったのか?」
俊介はパンの入った袋を葉月の前にもちあげて、中身をゆする。葉月は苦笑いを続けたけど、最終的に折れてくれた。
「ぜひ食べたい……かな」
「好きなの食べなよ」
「お言葉に甘えて……」
葉月は俊介の横に腰をおろし、袋の中からいくつかのパンを取り出した。葉月は口の中にパンをふくんで、もそもそと咀嚼する。葉月のほっぺたが生き生きと膨らんでいた。
「まさかこんなイベントに遭遇するなんてね」
「奇遇だな。買い過ぎたのがよかったのかな。あるいは、ぱしられたのが」
「俊介って……パシリなの?」
「うーん、案外そうなのかもな?まぁ、そこは気にしないでくれ」
「はーい」
「それにしても、葉月も案外すみに置けないな。弁当でも、わすれたの?」
「今日のお昼、生徒会の集まりがあったんだよ」
「生徒会ね」
葉月は生徒会の役員を務めていた。所属していない俊介には未知の領域だけど、いろいろ学校の活動をしている
らしい。活動的な葉月に感心した。俊介だったら、お昼ぐらいのんびりしていたい。
――よくも、まぁ……こんなお昼まで、ご苦労なことだ。
「購買でお昼ごはんを買おうと思ってたんだけどね……その活動がここまでもつれて、買えなくなったんだよ。あそこって、品物なくなるのはやいんだよね」
「たいへんだな」
「たいへんだよ。俊介も手伝えば?」
俊介はふるふると首を横にふった。葉月と活動するのはおもしろうそうだったけど、そこにはおそろしいリスクがはらんでいる。いやな失態をおかしそうで、気が引ける。
「勘弁してほしい。また変態呼ばわりされたら、かなわない」
「おかしな話をほじくり返すのね」
葉月はぷくっとほっぺたを膨らませる。なんだか怒った猫のような仕草だった。
「けっこう気にしてるんだ」
「ひどい言い草だよね……私、俊介におかされそうになったんだよ」
あまりにも極端な妄想に、俊介はむせってしまった。気管支がつまり、げほげほっと食べかけのパンを吐き出す。まわりの人たちに聞かれていないか、不安だった。俊介はきょろきょろと周囲を見回し、一先ず安心した。ここにいる人たちは自分のことに夢中のようで、話に花を咲かせている。ひかえめな声が響いていた。
「時と場所を選んでくれよ。今のは洒落にならないだろ」
「せめてものお返しだよ」
葉月はいじわるくほほ笑んだ。俊介はがっくりと肩をおろして、ふたたびパンにありついた。
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化学の教師はチョークをおくと、教室から退出していく。張りつめた空気が、やわらいだ。生徒たちが緊張をゆるめて、談笑を始め出した。がやがやとにぎやかさが、クラス中に伝播していく。
――はやく購買に行かないと。あそこって競争率が高いんだよな。
授業が終わったら、すぐに購買に行ったほうがいいのだ。そうでもしないと、すさまじい数の人で込み合ってしまう。
イスから立ち上がろうとした時だった。喧騒にまぎれて、後ろから俊介の肩がぽんっと叩かられた。後ろを振り返ると、そこには太一がいた。太一は人懐っこそうな笑みを浮かべている。
「よっ、俊介」
俊介よりも、太一は頭一つ分大きかった。いっしょに立っているときは、俊介が見上げる形になる。
「あぁ、太一か。さっきの授業はずいぶん、眠かったな」
「あいにく俺は化学、好きだが」
「そうでした」
太一の成績はいいほうで、とくに化学の偏差値は全国模試でもトップクラスだった。太一とくらべてもあんまりよろしくないので、最近は気にしないようにしている。
俊介は立ち上がると、ぐっと伸びをした。
「なぁ、俊介。実は頼みがあるんだが」
「できる範囲で聞くよ」
「それは助かる。そんなにひどい要求はしないから、安心してくれ」
「ほんとかよ」
俊介は苦笑した。
「実はこの後外せない用事が入ってしまったんだ。もしよければ、購買でなにか買っておいてくれないか?」
「それぐらいなら、大丈夫だよ」
「まじか、恩に着るぞ」
太一は満面に浮かべると、ポンっとスキンシップをしてきた。ポケットから財布を取り出し、俊介に英世さんを渡してくる。
「これで買っておいてくれ。ちゃんと釣りは返してくれよ」
「了解。レシートは改ざんしておくから」
「ふざけるな」
太一が突っ込んでいる横で、俊介は自分の財布に英世さんをしまった。
クラスメイト達は机を並べてお昼を食べたり、教室から出ていったりする。出遅れた感じがするが、友達からの頼みごとなら仕方なかった。
友達といっても、奇妙な関係にはちがいない。太一の行動は、一般のそれとはかけ離れている。クラスに馴染むのは上手いが、太一の行動についていける人はすくない。なんの因果か、太一とは息が合った。たまにストレスも溜まるが。
「おっと、じゃあ俺はここらで失礼するぞ。時間も押してることだし」
「安心して行ってきなよ。昼ごはんはちゃんと確保しておく」
太一はしゅたっと手をあげると、そそくさと教室を出て行ってしまった。
あとに残された俊介は、購買に向かった。さいわいにまだ混雑はそれほどしていなかった。まばらに人のいる廊下をかき分け、目的地にやってきた。俊介はさっさと品物を買って、外に出る。そこにはたくさんの人だかりができていて、ぎゅうぎゅう詰めだった。
――こういう人並みってのは、苦手なんだよな……遭遇しなくて、ほんとよかった。さて、どこに行こうか。
今日は晴天だ。すきとおった青空がまぶしい。
こういう日は、お日様の下にいたいものだ。わざわざ教室で食べるのももったいないなかった。せっかくだから、外で食べたい。
ぶらぶらと校庭を歩きまわっていると、いい場所を発見した。木々にかこまれたところに、ベンチが備え付けらている。今日はあんまり人がいないようだった。ベンチに腰を下ろすと、袋の中からパンを取り出した。
――それにしても、買いすぎたかな。
太一がどのぐらい食べるのか大体把握しているつもりだったけど、予定よりもおおく買ってしまった。考える時間ももったいなかったし、あれもこれもと手を出してしまった。――太一なら、全部食べてくれるだろう。
都合のわるいことを太一に押しつけて、俊介はパンを頬張った。
ざぁざぁと、心地いい秋風が吹きわたる。
しばらくパンを食べていると、見知った顔が目に入った。葉月だった。はぁっとため息をついた葉月は、ぐった
りうなだれている。俊介を発見すると、バツの悪そうに顔をしかめた。俊介は平然を装い、葉月に手をふった。
「……本日、二度目だよ。ひょっとして、私の後をつけてるの?」
「失礼な。さきにここにいたのは、こっちだ。葉月のほうが後出しだろ」
「呑気だよね……」
葉月はジト目を送ってくる。ふいに葉月のお腹から、ぐーっと鈍い音が鳴った。俊介が疑問符を浮かべている
と、葉月の頬はピンクに染まった。葉月は申し訳なさそうに縮こまると、さっとお腹を両手でおさえた。
「お腹すいてるの?」
「すいてるね」
ちんっと、沈黙が続いた。
葉月はどこかに視線を泳がしているし、俊介は手持無沙汰になった。話を切り出しづらかった。まわりでは、やってきた生徒たちが黄色いを声をあげている。さすがにこのままでいけないだろうし、俊介から話題をもちかけることにした。
「よかったら食べる、このパン?」
「いいの!?」
葉月はきらきらと目を輝かせると、ぐいっと俊介の近くに接近してきた。シャンプーの芳香が、俊也の鼻をくすぐる。香恋の無防備な笑顔に、俊介はドギマギしてしまった。はっと冷静になった葉月は、俊介とから距離を置いた。
俊介はこほんと咳をした。動揺を隠すようにして、気持ちを切り替えたのだ。
「やっ、やっぱり遠慮しとくよ。俊介が自分で食べなよ。私は……そうだ、近くのコンビニに行くから」
葉月はぶんぶんと両手を左右にふった。口では断わっているけど、視線はパンにそそがれている。
「構わないよ。買い過ぎて、困ってたところなんだ。だいだい……三人分ぐらい買ったのか?」
俊介はパンの入った袋を葉月の前にもちあげて、中身をゆする。葉月は苦笑いを続けたけど、最終的に折れてくれた。
「ぜひ食べたい……かな」
「好きなの食べなよ」
「お言葉に甘えて……」
葉月は俊介の横に腰をおろし、袋の中からいくつかのパンを取り出した。葉月は口の中にパンをふくんで、もそもそと咀嚼する。葉月のほっぺたが生き生きと膨らんでいた。
「まさかこんなイベントに遭遇するなんてね」
「奇遇だな。買い過ぎたのがよかったのかな。あるいは、ぱしられたのが」
「俊介って……パシリなの?」
「うーん、案外そうなのかもな?まぁ、そこは気にしないでくれ」
「はーい」
「それにしても、葉月も案外すみに置けないな。弁当でも、わすれたの?」
「今日のお昼、生徒会の集まりがあったんだよ」
「生徒会ね」
葉月は生徒会の役員を務めていた。所属していない俊介には未知の領域だけど、いろいろ学校の活動をしている
らしい。活動的な葉月に感心した。俊介だったら、お昼ぐらいのんびりしていたい。
――よくも、まぁ……こんなお昼まで、ご苦労なことだ。
「購買でお昼ごはんを買おうと思ってたんだけどね……その活動がここまでもつれて、買えなくなったんだよ。あそこって、品物なくなるのはやいんだよね」
「たいへんだな」
「たいへんだよ。俊介も手伝えば?」
俊介はふるふると首を横にふった。葉月と活動するのはおもしろうそうだったけど、そこにはおそろしいリスクがはらんでいる。いやな失態をおかしそうで、気が引ける。
「勘弁してほしい。また変態呼ばわりされたら、かなわない」
「おかしな話をほじくり返すのね」
葉月はぷくっとほっぺたを膨らませる。なんだか怒った猫のような仕草だった。
「けっこう気にしてるんだ」
「ひどい言い草だよね……私、俊介におかされそうになったんだよ」
あまりにも極端な妄想に、俊介はむせってしまった。気管支がつまり、げほげほっと食べかけのパンを吐き出す。まわりの人たちに聞かれていないか、不安だった。俊介はきょろきょろと周囲を見回し、一先ず安心した。ここにいる人たちは自分のことに夢中のようで、話に花を咲かせている。ひかえめな声が響いていた。
「時と場所を選んでくれよ。今のは洒落にならないだろ」
「せめてものお返しだよ」
葉月はいじわるくほほ笑んだ。俊介はがっくりと肩をおろして、ふたたびパンにありついた。
足でふみゅふみゅ♡ 6 に続きます