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足でふみゅふみゅ♡ 5

続きを更新しました。



足でふみゅふみゅ♡ 6 に続きます
 


足でふみゅふみゅ♡ 1 に続きます
   ↑まだ読んだことのない人は、ここから初めのシーンにいけます。




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 鉛筆の走る音がこだましている。人口密度のおおい教室では、生徒たちがノートに板書している。なかには、寝ている人もいた。

 授業の終わりを告げる鐘が鳴った。

 化学の教師はチョークをおくと、教室から退出していく。張りつめた空気が、やわらいだ。生徒たちが緊張をゆるめて、談笑を始め出した。がやがやとにぎやかさが、クラス中に伝播していく。

――はやく購買に行かないと。あそこって競争率が高いんだよな。

 授業が終わったら、すぐに購買に行ったほうがいいのだ。そうでもしないと、すさまじい数の人で込み合ってしまう。

 イスから立ち上がろうとした時だった。喧騒にまぎれて、後ろから俊介の肩がぽんっと叩かられた。後ろを振り返ると、そこには太一がいた。太一は人懐っこそうな笑みを浮かべている。

「よっ、俊介」

 俊介よりも、太一は頭一つ分大きかった。いっしょに立っているときは、俊介が見上げる形になる。

「あぁ、太一か。さっきの授業はずいぶん、眠かったな」

「あいにく俺は化学、好きだが」

「そうでした」

 太一の成績はいいほうで、とくに化学の偏差値は全国模試でもトップクラスだった。太一とくらべてもあんまりよろしくないので、最近は気にしないようにしている。

 俊介は立ち上がると、ぐっと伸びをした。

「なぁ、俊介。実は頼みがあるんだが」

「できる範囲で聞くよ」

「それは助かる。そんなにひどい要求はしないから、安心してくれ」

「ほんとかよ」
 俊介は苦笑した。

「実はこの後外せない用事が入ってしまったんだ。もしよければ、購買でなにか買っておいてくれないか?」

「それぐらいなら、大丈夫だよ」

「まじか、恩に着るぞ」

 太一は満面に浮かべると、ポンっとスキンシップをしてきた。ポケットから財布を取り出し、俊介に英世さんを渡してくる。

「これで買っておいてくれ。ちゃんと釣りは返してくれよ」

「了解。レシートは改ざんしておくから」

「ふざけるな」

 太一が突っ込んでいる横で、俊介は自分の財布に英世さんをしまった。                  

 クラスメイト達は机を並べてお昼を食べたり、教室から出ていったりする。出遅れた感じがするが、友達からの頼みごとなら仕方なかった。                                      

 友達といっても、奇妙な関係にはちがいない。太一の行動は、一般のそれとはかけ離れている。クラスに馴染むのは上手いが、太一の行動についていける人はすくない。なんの因果か、太一とは息が合った。たまにストレスも溜まるが。

「おっと、じゃあ俺はここらで失礼するぞ。時間も押してることだし」

「安心して行ってきなよ。昼ごはんはちゃんと確保しておく」

 太一はしゅたっと手をあげると、そそくさと教室を出て行ってしまった。                 

 あとに残された俊介は、購買に向かった。さいわいにまだ混雑はそれほどしていなかった。まばらに人のいる廊下をかき分け、目的地にやってきた。俊介はさっさと品物を買って、外に出る。そこにはたくさんの人だかりができていて、ぎゅうぎゅう詰めだった。

――こういう人並みってのは、苦手なんだよな……遭遇しなくて、ほんとよかった。さて、どこに行こうか。

 今日は晴天だ。すきとおった青空がまぶしい。                             

 こういう日は、お日様の下にいたいものだ。わざわざ教室で食べるのももったいないなかった。せっかくだから、外で食べたい。                                          

 ぶらぶらと校庭を歩きまわっていると、いい場所を発見した。木々にかこまれたところに、ベンチが備え付けらている。今日はあんまり人がいないようだった。ベンチに腰を下ろすと、袋の中からパンを取り出した。

――それにしても、買いすぎたかな。 

 太一がどのぐらい食べるのか大体把握しているつもりだったけど、予定よりもおおく買ってしまった。考える時間ももったいなかったし、あれもこれもと手を出してしまった。――太一なら、全部食べてくれるだろう。

 都合のわるいことを太一に押しつけて、俊介はパンを頬張った。

 ざぁざぁと、心地いい秋風が吹きわたる。

 しばらくパンを食べていると、見知った顔が目に入った。葉月だった。はぁっとため息をついた葉月は、ぐった
りうなだれている。俊介を発見すると、バツの悪そうに顔をしかめた。俊介は平然を装い、葉月に手をふった。

「……本日、二度目だよ。ひょっとして、私の後をつけてるの?」

「失礼な。さきにここにいたのは、こっちだ。葉月のほうが後出しだろ」

「呑気だよね……」

 葉月はジト目を送ってくる。ふいに葉月のお腹から、ぐーっと鈍い音が鳴った。俊介が疑問符を浮かべている
と、葉月の頬はピンクに染まった。葉月は申し訳なさそうに縮こまると、さっとお腹を両手でおさえた。

「お腹すいてるの?」

「すいてるね」

 ちんっと、沈黙が続いた。                                      

 葉月はどこかに視線を泳がしているし、俊介は手持無沙汰になった。話を切り出しづらかった。まわりでは、やってきた生徒たちが黄色いを声をあげている。さすがにこのままでいけないだろうし、俊介から話題をもちかけることにした。

「よかったら食べる、このパン?」

「いいの!?」

 葉月はきらきらと目を輝かせると、ぐいっと俊介の近くに接近してきた。シャンプーの芳香が、俊也の鼻をくすぐる。香恋の無防備な笑顔に、俊介はドギマギしてしまった。はっと冷静になった葉月は、俊介とから距離を置いた。

俊介はこほんと咳をした。動揺を隠すようにして、気持ちを切り替えたのだ。

「やっ、やっぱり遠慮しとくよ。俊介が自分で食べなよ。私は……そうだ、近くのコンビニに行くから」

 葉月はぶんぶんと両手を左右にふった。口では断わっているけど、視線はパンにそそがれている。

「構わないよ。買い過ぎて、困ってたところなんだ。だいだい……三人分ぐらい買ったのか?」

 俊介はパンの入った袋を葉月の前にもちあげて、中身をゆする。葉月は苦笑いを続けたけど、最終的に折れてくれた。

「ぜひ食べたい……かな」

「好きなの食べなよ」

「お言葉に甘えて……」

 葉月は俊介の横に腰をおろし、袋の中からいくつかのパンを取り出した。葉月は口の中にパンをふくんで、もそもそと咀嚼する。葉月のほっぺたが生き生きと膨らんでいた。

「まさかこんなイベントに遭遇するなんてね」

「奇遇だな。買い過ぎたのがよかったのかな。あるいは、ぱしられたのが」

「俊介って……パシリなの?」

「うーん、案外そうなのかもな?まぁ、そこは気にしないでくれ」

「はーい」

「それにしても、葉月も案外すみに置けないな。弁当でも、わすれたの?」

「今日のお昼、生徒会の集まりがあったんだよ」

「生徒会ね」

 葉月は生徒会の役員を務めていた。所属していない俊介には未知の領域だけど、いろいろ学校の活動をしている
らしい。活動的な葉月に感心した。俊介だったら、お昼ぐらいのんびりしていたい。

――よくも、まぁ……こんなお昼まで、ご苦労なことだ。

「購買でお昼ごはんを買おうと思ってたんだけどね……その活動がここまでもつれて、買えなくなったんだよ。あそこって、品物なくなるのはやいんだよね」

「たいへんだな」

「たいへんだよ。俊介も手伝えば?」

 俊介はふるふると首を横にふった。葉月と活動するのはおもしろうそうだったけど、そこにはおそろしいリスクがはらんでいる。いやな失態をおかしそうで、気が引ける。

「勘弁してほしい。また変態呼ばわりされたら、かなわない」

「おかしな話をほじくり返すのね」

 葉月はぷくっとほっぺたを膨らませる。なんだか怒った猫のような仕草だった。

「けっこう気にしてるんだ」

「ひどい言い草だよね……私、俊介におかされそうになったんだよ」

 あまりにも極端な妄想に、俊介はむせってしまった。気管支がつまり、げほげほっと食べかけのパンを吐き出す。まわりの人たちに聞かれていないか、不安だった。俊介はきょろきょろと周囲を見回し、一先ず安心した。ここにいる人たちは自分のことに夢中のようで、話に花を咲かせている。ひかえめな声が響いていた。

「時と場所を選んでくれよ。今のは洒落にならないだろ」

「せめてものお返しだよ」

 葉月はいじわるくほほ笑んだ。俊介はがっくりと肩をおろして、ふたたびパンにありついた。


足でふみゅふみゅ♡ 6 に続きます

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長谷川名雪

Author:長谷川名雪
初めまして、長谷川名雪と申します。
シナリオライター・小説家などを目指して修行中です。
このサイトでは主にエッチぃな作品を載せていきます。
よろしくお願いします。

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