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ふたなりっ子

 クルミは浮足立っていた。リサの部屋に誘われたのだ。
「ふふっ、ずいぶん嬉しそうですわね」
 隣を歩くリサが、こちらをふり向いた。その顔には、穏やかな微笑をたたえている。腰まで伸ばした髪は、さらさらとなびいてる。きらきら天使の輪がまたたいた。
 リサの輝かしい雰囲気に、クルミは高揚してしまう。
 リサはあこがれの存在だった。
 クルミより年上で、大人びた雰囲気を醸し出している。平均的な女性よりも、大きな身長だ。あまり高くないクルミは、見上げる形になる。上から見下ろされているのに、威圧感はなかった。リサのはなつ温かさがが、緊張感を和らげているのだ。
 リサの胸はおおきかった。内側から制服をこんもりと盛り上げ、セクシーな主張をしている。同性ながら、クルミは見とれてしまう。自分もあんな風な大きな胸がよかった。クルミの胸は、お世辞にも大きいとは言えなかった。制服はほとんど平らなままで、凹凸にかけている。クルミにとって、自分の子供っぽい体型はコンプレックスだった。日頃から、リサの体型には憧れていた。あんなふうになりたかった。
 不思議なことに、リサに嫉妬したりはしなかった。リサと比較すると沈んだりはするけど、一緒にいる喜びの方がおおきかった。
「お姉さまの部屋に入れるのが嬉しくて」
 クルミはぽっとはにかんだ。部屋を見せてもらえるのは、リサに心を許してもらった証しだ。特別とはいかなくとも、そこらへんの人よりは認めてもらえたのだ。これが嬉しくないわけなかった。
「そんなに喜んでもらえるなんて。私も誘ってみたかいがありましたわ」
「お礼をいうのは私の方。どんな部屋なのか、いまからわくわくする」
「気に入ってもらえればね。私も精いっぱいのおもてなしをするつもりですわ」
 胸がいっぱいだった。
 お姉さまに大切にされている。誰かから想われるのが、こんなにも嬉しいものだったなんて。人生で初めての経験だった。リサは気品にあふれてる。部屋もきっと、リサの人柄を表した高貴なものだろうか。普通に歩いてるだけで、期待がふくらんでいく。
「ここが私の部屋ですわ」
 目の前には大きな扉があった。木製のそれは年季が入ったものらしく、荘厳な趣をかもし出している。リサは扉を開け、クルミを中にまねいた。
「わぁ……」
 思わず、クルミは感激してしまった。
 あこがれのリサの部屋に入れた。なんともいえない充足感があった。部屋はシンプルだった。広々とした部屋の中には、純白のベッドが備え付けられてある。勉強机やタンスなど必要最低限の家具しかなかった。カーペットは清潔に扱われているらしく、ほこりが見当たらなかった。その単純さに、クルミは親近感を覚えた。
 ひとつ気になったことがあった。
 まだ日は暮れてないのに、部屋のカーテンは閉め切られている。カーテン越しにうっすら光が入るだけで、あまり明るくはなかった。
「気にいてくれたかしら」
「もちろん。お姉さまらしい、清潔な部屋なの」
「ありがとう」
 カチッ、リサは後ろ手にカギを閉めた。リサはこちらにゆったり歩いてくる。リサの瞳はきらきら潤んでいる。吸いこまれそうだった。その妖しい瞳に見つめられると、クルミの頭はぼんやりしてしまう。
 リサはクルミの肩に手をのせた。たんに触られただけだというのに、クルミの全身はびくっと震えてしまう。
 静かな迫力があった。
 リサの視線には有無をいわせぬ真剣さがまじっている。リサの迫力におされたクルミは、こわくなった。目の前にいる人が、自分の知ってるリサじゃないような気がした。根拠はなかった。別人に触れられているみたいで、全身に悪寒がはしった。今すぐ逃げ出したくなったけど、金縛りにあったようにリサから目を離せなかった。
「うっ、あぁっ、お姉さま」
「やっと機会に恵まれましたわ」
 肩におかれたリサの手が、ギュッと握られる。乱暴に扱われたのが、イヤだった。ヘビににらまれた蛙のように、ミクルは身体に緊張をみなぎらせる。
「どうしたの。今日のお姉さま、なんだかヘン」
「あはっ、そうかしら。いつもどおりにふるまってるつもりですのに。仕方ありませんわね」
「やっ、コワいよ」
「まぁ、そんなに震えなくていいですわよ。すぐに気持ち良くなれますわ」
「なっ、なにが――うっ、むぐっ」
 クルミが話を終えるよりもはやく、リサはせまったきた。クルミの唇に、リサのそれをのせてきた。一瞬、まともに息ができなかった。ふさがれた口の代わりに、鼻息が荒くなってしまう。リサの唇はあつぼったかった。ぷっくり弾力にみちていた。クルミが唇をかさねていると、押し返されそうだった。その瑞々しさに、吸い寄せられてしまう。
 クルミは頭を乱暴にゆすり、やっとのことでリサの呪縛から解放された。
 ぜぇぜぇと息をみだし、リサに注意をむける。リサは名残惜しそうに、自身の唇をなぞっている。てらてらとぬれ光った紅。
――あれに唇をうばわれた。ファーストキスが。
 リサにファーストキスを奪われたのは、そんなにショックではなかった。それどころか、胸がときめいてしまう。あこがれのリサが自分にキスをしてくれた。その事実を意識すると、うっとりする。
 全身をあたたかく包み込まれているような、心地よさがあった。
「おねぇ、さま。いったいなにを」
「愛の告白ですわ。クルミと一緒の時間を過ごしているうちに、あなたへの想いが抑えきれなくなったのです」
「いっ、いけません。私とお姉さまは女同士で」
 気持ちは嬉しかった。リサが情欲をもってしまうほどに、クルミを気にかけてくれた。それだけで十分だった。 こうして危ない行為に走ろうとするのは、できれば胸の内に秘めていてほしかった。
 クルミとリサは同性だ。
 同性同士が肌をかさねあうのには、背徳感があった。世間の常識に洗脳されているというか、本能的な抵抗があった。周りの人たちがレズ行為を知ったらと思うと、ぞっとする。リサの期待にこたえられないのは悪いけど、こればっかりはどうしようもない。
「ひどいですわ。告白をむげに扱うなんて、私傷つきましたわ」
「傷つけるつもりじゃなくて。って、お姉さま!」
 リサはまたキスをしてきた。
 クルミの頭の後ろに腕をまわし、ギュッとしがみついてくる。唇同士がぷるぷるおし合う。リサの唇から、唾液にぬれた舌がはいでてきた。うねうねうごめいた舌は、クルミの唇をなぞる。リサの生温かな唾液がまぶさり、クルミの唇はてらてら濡れてしまう。リサが舌をうごかすと、クルミの中でしびれるような快感がおしよせてくる。リサの吐息に、頭がくらくらふるえた。クルミの身体がゆるんだ。リサの舌が、クルミの口の中にわって入る。舌はクルミの前歯をなでまわし、さらに奥ふかくに侵入しようとする。
 頭がしびれて、うまく考えがまとまらない。なにがなんだか分からなかった。状況に流されるままに、クルミはリサの舌を口内に迎え入れた。
「んっ、ふうっ、はうぅっ」
 リサの舌が口腔をなでまわす。クルミの粘膜に唾液をすりつけ、這いまわった痕跡をのこしてくる。自分の口がリサにマーキングされているようで、わるい気はしなかった。陶然とされるがままに、従ってしまう。うねうね粘膜をこすりつけ、歯の裏側にも這った。歯ぐきの裏側を責められると、ぞくぞく背筋が歓喜にふるえてしまう。一通りクルミの口腔を堪能し終わると、クルミの舌に絡みつこうとする。ほんの少し舌が接触しただけで、自分がおかしくなってしまいそうだった。クルミは反射的に舌をひいた。逃がすまいと、リサの舌はクルミのそれを追ってきた。
 絡み合うみだらな舌。弾力にあふれた、瑞々しい感触をあじわう。リサは舌の付け根をていねいになでまわわした。
 ムラムラした感情が抑えきれない。
 誘われるままに、クルミは自分からリサの舌をむさぼった。熱をおびた息がはきだされる。くぐもった呻きがもれ、耳の中にひびいた。リサの唾液が口腔におしよせてくる。ねばねばした唾液は、口の粘膜に張り付いてくるような濃さだった。せっかくのリサの体液をこぼすのがイヤで、クルミは必死に嚥下した。
 ややあって、リサは唇を離した。互いの舌にくっついた唾液が、透明な糸をつっとひいた。
「はぁぁっ、クルミの顔、すごくいろっぽいですわ」
「おっ、おねぇさまぁ、もうっ、やめてぇ」
「いやですわ。まだ始まったばかりですわ。これぐらいで音をあげてもらっては、困りますわ」
 リサの両手がクルミの胸におかれた。制服越しに柔らかな手の感触が伝わる。
「可愛らしいサイズですわね」
「やっ、やだぁ。見ないでぇ」
 胸はコンプレックスだ。自分の貧相な胸を、リサの前にさらしたくなかった。小さいよりは、大きな方がいいに決まってる。リサに自分の胸を見られて、幻滅されたくない。
「どうしてかしら。私、クルミの胸こんなに好きなのに」
「だ、だって。私の胸、ちいさいから」
「私は気にしてませんわよ。クルミのことなら、なんでも受け止めてあげますわ」
 じわっと胸にしみる言葉だった。心のどこかで一歩引いていた部分があった。自分のすべてをさらけ出したら、嫌われてしまうんじゃないかって不安だった。
 それがどうだろう。クルミは私を受け止めるって、言ってくれた。単純にうれしかった。自分を認めてくれる人って、こんなにも頼りになる。
 リサは制服越しに胸をもむ。乳房の下を支えるように、やんわりと愛撫する。
「あっ、はあぁっ、おねぇさまぁ」
「感じてくれてるのかしら。可愛いわね」
 理性が飛んでしまいそうだった。レズなんていけないのに、リサへの気持ちが強くなってしまう。限界の一歩手前だ。このまま続けていたら、一線をこえてしまう。それはいけないことだ。
「だめ、お姉さま!」
 喉が張り裂けんばかりに、クルミは叫んだ。室内に、つんざくような音が木霊する。
 リサは目を丸くした。言い過ぎたと後悔するも、おそかった。リサはまつ毛をふせ、うつむいてしまう。
「ごめんなさい。やり過ぎですわね。やっぱりこんなこと、いけませんわよね」
「おっ、お姉さま」
「クルミと一緒になりたかったのですけど、もうお開きにしましょう。クルミをないがしろにしてまで、自分の欲望を優先するつもりはありませんわ」
 しんと、部屋は静まり返った。さっきまでの喧騒がうそのようにひいた。
 リサの気持ちを裏切ってしまった。
 自分にそんなつもりはなかったとはいえ、結果がしめしている。同性でまぐわうのはいけないことだ。下手をすれば、後ろ指をさされるはめになる。クルミの中で、葛藤がせめぎあう。世間の常識に縛られる必要なんて、あるのだろうか。そんなあやふやなもの、リサを傷つけてまで守らなきゃいけないものだろうか。
――私はお姉さまが好きだ。
 クルミは意を決した。リサと深くつながれる、それ以上に幸せなことなんてあるのだろうか。
「……して」
「クルミ?」
「私をお姉さまの好きなように愛してください」
「でも」
 リサはこちらを窺う。クルミを刺激しないように、言葉を選んでいた。詳しく考えている内容まで読めないけど、リサの目が物語っている。クルミはそれでいいのかと。
 構うものか。
 だいたいキスまで奪っておいて、いまさらなにをためらう必要がある。サイは投げられたのだ。クルミの気持ちもかたまった。リサになら初めての相手になってもいい。
「抱いてください。私は後悔しません」
 手がぶるぶる震えた。
 堂々とした宣言とは裏腹に、内心は不安でたまらなかった。怖くないといったら、ウソになる。未知の世界に足を突っ込もうとしているのだ。どんなふうになるのか、クルミには予測もつかない。
 ふっと、リサの表情がやわらいだ。
 震えるクルミの手に、両手をそっとかさねた。あたたかな抱擁だった。リサの優しい想いが伝わってくるようで、気分が和らいだ。
「分かりましたわ。正直、私も怖かったのです。あなたに拒否された時、自分がとんでもないことをしでかしたと思い知らされました」
「そ、そんなこと。多少は、怖かったけど、その、イヤじゃなかった」
「優しい子ですわ。クルミ」
 リサの舌がはクルミの首筋にまとわりつく。れろれろといやらしく這いまわり、きらめく唾液をすりつけていく。
 リサの舌使いに翻弄されてしまう。リサの舌先がふれた表面から、狂おしいような陶酔がまきおこる。頭の中にピンク色の霞がかかり、リサの愛撫を求めてしまう。
「はぁっう、おねぇさまぁ」
「ちゅっ、れろ。もっと喘いで、クルミ」
 舌先がクルミの鎖骨をたんねんに舐める。じっとり鎖骨の形をうきぼりにする。しびれるような愉悦に、クルミはリサにすべてを委ねたくなる。
 もっとリサとのスキンシップを大切に味わいたかった。
 リサの手がもぞもぞ動き、クルミの上着の裾にすり寄った。
「上着を脱がしますわ」
「んっ、むぅ。お、お姉さま、それはまって」
 心の準備ができていなかった。リサになら自分の身体を好きにしてもよかったけど、すこしばかり恥ずかしい。 自分の体にコンプレックスがあるクルミとしては、リサに肌をみせるのは気がひけた。
 リサを信じてないわけじゃない。クルミの精神に問題があるのだ。簡単に劣等感を克服はできない。
「ふふっ、もう遅いですわ。私にクルミのすべてを見せなさい」
 リサは鎖骨への愛撫を続けたまま、クルミの上着にかけた手をめくり上げていく。しだいに肌が外にさらされ、クルミの胸まで露出してしまう。むき出しになったお腹は、ひくひく上下している。胸をブラジャーが隠すだけで、あられもない姿になる。
 おさない体型だった。
 凹凸にとぼしく、肉づきの薄い体型。そんな身体を喜んでくれる人がいるのだろうか。
 羞恥心でいっぱいだった。リサに上半身をみられてしまった。リサの目がまともに見れない。穴があったら入りたいぐらいに、悶絶してしまう。リサはランランと輝かせ、クルミの身体に釘付けになっている。止めてほしい。今すぐ視線をそらしてほしかった。
「みっ、見ないで」
「どうしてかしら。こんなにいいものをもっているのに」
 リサはクルミの乳首をつんっと突っつく。あまい電流が乳首のまわりにおこり、クルミの頭をしびれさせる。こりっとかたさを増していき、ブラジャーの内側から盛り上がる。ブラジャーの表面には、小さなふくらみが浮かんだ。
「乳首、こんなにかたくしちゃって。クルミはエッチな子ですわね」
「やぁっ、私はエッチなんかじゃ」
 リサにエッチな子だと認識されたくない。日頃からエッチな想像を膨らませてるみたいに思われるのは、イヤだった。
 自分が淫乱に見られるのは、すごく恥ずかしい。奇異な目をむけられたくない。
「私の前で、遠慮なんていりませんわ」
 クルミの耳に、ふぅっと息がふきかける。
 予想もしてなかった部位をせめられ、思わずなやましい吐息を漏らしてしまう。背筋がぞくぞくとしびれ、うっとり夢見心地になる。耳の縁を舌でなぞり、クルミのブラジャーを胸の上に持ち上げた。
 胸を覆い隠すものはなくなり、小ぶりな乳房がさらしだされた。ふくらみの肉はうすく、板のようだった。手で覆えばば、すっぽり隠れてしまいそう。
 クルミはいやいやと頭をふった。リサに自分の胸を目視されている。それがとても居心地わるい。
「これがクルミのおっぱい」
 リサは下から乳房を持ち上げるように、クルミの胸を繊細な手つきで愛撫する。クルミを気遣っているらしく、ほどよい力加減だった。リサの手がクルミの胸にすいつき、やわやわ形を変える。
「どうかしら。人の胸をさわった経験ってないから、勝手が分からないのだけど」
「うっ、ふわぁっ。おねえさまのっ、手つき、いやらしいぃ」
 リサの愛撫に、クルミは癒されていく。自分はどうして胸にコンプレックスを持っていたのだろう。あれほど深かった悩みが、些末に思えてくる。じんわり胸がこそばゆくなり、気分がうっすらはれる。
「最高の褒め言葉ですわ」
「あぅっ、お姉さま、もっとっ、感じさせてぇ」
「かわいい後輩の期待は裏切れませんわね。こまりましたわ」
 リサは愛撫をする手の動きをとめた。人差し指をかるく胸にたてる。
「こうしてみるのはどうかしら」
 置いた人差し指で、やんわり胸をなでまわす。這いまわる指の腹の感触が、せつなさを駆り立てる。
 つぅっと指の動いたあとから、かすかな疼きがしみる。じわじわ胸が熱をおびていく。もっと胸全体を愛撫してほしい。人差し指が動くのはせまい場所だ。少しずつ胸を触れられるのがもどかしい。
「やぁぁっ、おっぱい、いいよぉっ」
「もっとかわいい声でなかせてあげますわ」
 リサは乳房の縁から、円をえがくように人差し指をなぞりあげた。胸を這いまわる指の感触が、すこしずつクルミの昂ぶりを挑発する。
 癖になってしまいそうだ。胸にはちょっとずつしか触れていないのに、積み重なった疼きが身体をなやませる。
「クルミの乳輪、色がこくなってますわよ」
 リサの指摘に、クルミははっとなった。
 乳輪は赤みをまし、胸に領域をひろげている。リサの攻めに感じた証しだった。心がくすぐったい。リサの愛撫に感じさせてもらえたのが、クルミの安心感を刺激する。リサの期待にこたえられて、誇らしい気分だった。
「だっ、だってお姉さまのテクニックが上手いんだもの」
「お世辞が上手な子ですわね」
 リサは妖艶にほほえんだ。見たことのない蠱惑的な表情に、クルミは目をはなせなかった。その表情をみていると、うっとりまどろみに沈んでしまいそう。
 乳輪にびくっとあまい電流がながれた。
 リサの人差し指が乳輪に、そっと円を描いている。触れるかのギリギリのタッチだった。胸のなかから悩ましい疼きがこみ上げてくる。乳首がどんどん勃起していき、敏感になってしまう。びくびくけいれんした乳首は、空気に触れるのでさえ感じてしまう。
 こんなに乳首が膨らんだのは、初めてかもしれない。一人で自慰をしたときは、今みたいになったりはしなかった。クルミのなかでみだらな欲求が大きくなる。
 リサに乳首をいじめてほしい。かたくなった乳首をいじって、快楽を植え付けてほしかった。
「乳首もこんなに大きくしちゃって。仕方ありませんわね」
「ちっ、乳首が、むずがゆいのぉ。いじめてぇ」
「ふふっ、みだらなおねだりですわね」
 リサは乳首の先端をつっついた。震えた乳首からは、こらえがたい愉悦がまきおこる。
 もっと触ってほしくて、クルミは期待のこもった視線を、リサに送った。
 くるおしい。クルミの望んだ反応を、リサはしてくれなった。クルミのは顔をじっと見つめたまま、にこにこ微笑んでいる。
 絶対に確信犯だ。リサはクルミのもだえる姿を見て、喜んでいる。いじわるだ。リサの思い通りにもだえるのは悔しいけど、身体はいうことを聴いてくれない。感極まって、クルミはほっぺを膨らませてしまう。
「いっ、いじわるしないでよぉ。乳首をもっと愛撫してよ」
「いわれるまでもありませんわ。でもねぇ、クルミのとろけた表情を見ていたかったのよ」
「じっくり観察しないでぇ」
「いいじゃない。クルミの艶姿を見れるだけで、眼福ですわよ」
 人差し指の腹で、リサは乳首をこねまわしてくる。乳首の感触を味わうように、むにむに優しくつぶす。
「ずいぶんかたくしてるのですわね」
「それいいよぉ」
 リサは両手の親指と人差し指の腹で、乳首の側面をゆすった。むき出しの神経をなでられているようで、リサの手つきが鮮明に伝わってくる。感じてしまう。こすられた乳首が真っ赤に充血する。やわらかく撫でられてたかと思うと、リサは乳首をぎゅっとつまみあげる。リサは単調にならないように、指の動きに緩急をつける。クルミを気持ちよくさせる気遣いだった。
 リサの術中にハマってしまい、休む暇がなかった。
「クルミの乳首、なんだかイチゴみたいですわ」
 リサはクルミの胸に顔をちかづけた。唇からは濡れた舌がでてきた。舌はいやらしくうごめき、ペロッと乳首の先端をなめた。弾力のある舌が乳首をなめると、指とはまた違った感触に襲われる。ぷにぷに柔らかくて、跳ね返ってくるような感触だ。乳首には生温かな唾液がはりつき、あわい光がまたたく。
「おねさまぁの舌が、私の胸にィィっ」
「気持ちいいのですね、クルミ」
 乳首の側面を、リサの舌がなめまわす。うねうね唾液をぬりたくり、胸をおかしていく。
「れろっ、ちゅ、クルミの乳首、おいしそう」
 リサはハムッと、乳首を口の中にふくんだ。弾力に満ちた唇が、乳首にまとわりつく。湿っぽい吐息につつまれ、クルミは陶然とゆるんでしまう。
 リサのみだれた鼻息が胸にかかり、クルミまで興奮をあおられてしまう。厚ぼったい唇が、乳首をハグハグする。
「んっ、はむっ、むふぅ」
「お姉さまのくち、のなかぁ、いやらしいよぉ」
 リサの舌が乳首の先端を、あらあらしく舐めまわす。唇を動かすのを忘れずに、器用にクルミをせめる。
「くちゅ、れろっ、ちゅぱぁっ。もふっと、クルミの素顔を、みせてぇ」
 休んでいたリサの両手が、動きを再開する。クルミの胸を包み込むように、愛撫をはじめた。肉厚の唇で乳首を舐めまわされ、乳房をもまれる。
 意識がふわっと飛びそうになる。胸はいっぱいに張りつめている。乳腺がじわじわ甘酸っぱく疼き、内側からきゅっと圧迫される。
――胸ってこんなに気持ちよかったんだ。
 大切な人に、触れられるのがうれしい。リサの優しさがじかに伝わってくるようで、きゅんっと潤んでしまう。胸にコンプレックスを持っていた、自分が信じられなかった。胸は愛情を受け入れる場所なんだ。
「ううっああぁ、いいよぉっ」
「あでやかですわねぇ。下はどうなっているのかしら」
 リサの左手が胸を離れ、わき腹をうごめいていく。執拗な指の動きに、ぞわぞわむず痒くなる。皮膚の上をねばっこく這いずり、いやでも下半身を意識してしまう。
「ひゃんっ。どこにぃ、手を動かしてるのぉっ」
「はんっ、ぷちゅぅ。聞くまでもないでしょうに」
 スカート越しに動く手は、ビキニラインを滑っていき、ついには花園をかくすショーツにたどりついてしまう。 ショーツの上から細い指が、楕円を描くように恥丘をなぞりまわす。押し付けられた指はぷにぷにと弾力をあじわう。
「分かるかしら。私の指が、クルミのショーツに触れていますのよ」
「いっ、いわないれよぉ」
「奥はどうなってるのかしら」
 リサはショーツをわきにずらした。
 秘所がさらされる。ぷっくり盛り上がった恥丘に、うっすらと縦に切れ込みがある。縁を包むようにあかい大陰唇が、スリットからはみ出ていた。その上には豆粒ほどの肉芽がそびえ、かすかに充血する。大陰唇からは愛液がこぼれ、かんきつ類のような甘酸っぱいにおいをふわりと漂わせる。
 口や手の動きを止めたリサは、クルミの秘所を熱っぽくながめる。自分もじっくり観察したことのない場所をさらすのは、なんだか落ち着かなかない。自分のすべてを知られているような錯覚におちいってしまう。きれいな部分も、そうじゃないものも。慣れない感じに、自分でも羞恥心を抑えきれなかった。
 クルミは反射的に両手で秘所を隠してしまう。
「見えませんわよ、クルミ」
 リサは眉をしかめた。駄々っ子をたしなめるように、クルミをいさめる。
「だっ、だって。私のあれ、へんじゃないの」
「みじんも思ってませんわよ。クルミのあそこが見れるなんて、感激ですわ」
 クルミの両手に、リサは自分のそれをそっとかさねた。やさしく包み込まれると、わだかまっていたしこりが溶けていく。抵抗する気力が奪われる。
 リサはクルミの両手をゆっくり横にずらし、肉厚のスリットを人差し指でこすった。
 ちゅっ、くちゅっ、ぬちゅ。
 肉花弁がむずむずする。連続的にあわい悦楽の波がおしよせ、うっとり溜息をもらしてしまう。
「いやらしい蜜でいっぱいですわね」
「私のあそこがっ、お姉さまの指にぃ、いじられてるよぉ」
「よがっちゃって。この指を膣にいれたら、乱れてくれるのかしら」
 リサの人差し指が、クルミの膣内に侵入してくる。閉じ合わさった花弁をおしのけ、遠慮がちに膣粘膜をひろげる。
 自慰をするときに、膣内に指を入れたことはなかった。せいぜいスリットをこするぐらいだ。挿入するのに興味はあったけど、ためらってしまうのだ。そこまでする勇気がなかった。大げさかもしれない。一度でも指を入れてしまえば、壊れてしまうようで二の足を踏んでしまう。自分でも触れていない場所に、リサがいれてくる。
 不思議とイヤではなかった。一抹の違和感はぬぐい去れなかったけど、ふんわり安らいでしまう。後悔にさいなまる。もっと早くに膣内を開発していればよかった。
「膣内にぃ、指が入ってるぅ。あぁっ」
「さすがに締めつけてきますわね。このまま動かしますわよ」
「うんっ、クルミをエッチな子にして」
 指が抽送をはじめる。膣内の粘膜をほり進んで、指の形をなじませていく。普段は意識しない膣のなかが、まざまざと感じ取れる。
 クルミの意思とは反対に、膣壁がぎゅっとリサの指をしめつける。加減が難しいらしく、リサはぎこちなく指をうごかす。その不器用さがかえって、胸のときめきを刺激する。なんでもできるように思えるリサでも、不慣れなことはあるのだ。拙いながらも、ひたむきさが伝わってくる。クルミを感じさせようと、懸命にポイントを探っているのだ。指が膣内をいったり来たりをくりかえす。深くまで侵入したはずなのに、ふいに膣口まで戻ってしまう。もっと奥まで挿入してほしいような、膣口から抜かれそうなもどかしさにくすぐられる。
「クルミのあそこ、リサの指がずぷずぷって、行き来してるぅ」
「こんな感じでいいのかしら。クルミが気持ち良くなるためにも、練習しなくてはいけませんわね」
「そんなっ、十分いい気持なのぉ」
「あらっ、おだててもなにも出ませんわよ」
 リサの指が、うねうね回転運動をくわえた。膣壁にくっつけるように円をえがき、新鮮な刺激をうえつける。くにゅっと膣壁をおした指は、肉の壁にしずんでしまう。
 身体の内側を広げられる圧迫感に、クルミは官能のいただきに昇りつめていく。お腹から得体のしれないシグナルが全身にまきおこり、クルミの理性を溶かしていく。目の前の色彩がぼやけていき、リサの顔の輪郭がぱっとしなくなる。くねくねと腰があでやかにゆれ、じっとしていられない。
――なんだかヘンだ。
 身体の感覚がなくなっていく。
 うっすらと意識はあるのに、自分がいまなにをしているのか分からなかった。四肢を動かしてる実感もないし、ぼやけた視界はなにを映してるのだろう。息苦しかった。このままリサにせめられたら、おかしくなってしまいそうだ。
 複雑な感情をもてあました。自分がどうなってしまうのか、期待と不安がないまぜになる。耐えられる限界が近づき、わけが分からなくなる。
「いやぁぁっっ、私、とけちゃうぅ。リサに愛撫されて、とけちゃうよぉぉっ」
「いってしまいなさい。私にあなたのいく顔をみせて、さぁ」
 リサは指の動きを激しくした。膣内があまく溶かされていき、懸命にたもっていた理性がぷつんっと飛んでしまう。クルミのなかに快感の波が荒れくるう。身体をぴりぴり電流がながれていき、意識をとばされてしまう。
 シーツを両手で握りしめ、大きなしわをつくる。
 ほんのり赤みをおびた肌は、玉のようなあせをしっとりにじませる。むせるような匂いがこもった。
「ふぁぁぁああっ。お姉さまぁ!」
 目の前が真っ白になった。全身を快楽のあらしがふきぬける。
 背筋が弓なりにしなる。腰を宙につきあげ、全身を休むまもなくけいれんさせた。
 身体が軽くなったようだ。地に足のつかない奇妙な感じ。みだらな欲望をはきだして、なにもする気が起きない。リサのなかにわだかまっていた欲求が、しだいに満たされていく。
 ぴゅっと、膣口から愛液が漏れた。太ももをつたった愛液は、スカートにシミをたらした。
 クルミはがっくりとベッドの上にあおむけになる。呼吸をみだした身体には力が入らない。
「あはっ、いったクルミの顔もすてきね」
「だめぇ、あっちむいてぇ」
 リサにはしたない姿を見られてしまった。体制を整えたいけど、身体がいうことをきいてくれない。
 脱力した手足には、感覚がうっすらとしかなかった。リサを押しのける気力なんて湧かない。なさけない姿をさらしたのに、羞恥心はあんまりなかった。恥ずかしさよりも、充実感のほうが大きかった。
 こんなに気持ち良くいった経験、これまでにあったのか。自分で身体をまさぐるのとは、まるで違った。
 胸が張り裂けてしまいそう。リサの愛撫は、クルミを未知の世界に連れて行ってくれた。自分で自慰をしたときには、たどり着けなかった領域に。持て余した肉欲を処理するだけでは、こんなにも気持ち良くなかっただろう。 感激に胸がくすぐったい。
「つれないですわね。本番はこれからだっていうのに」
 リサはぷくっと頬をふくらませた。おさない仕草だ。大人っぽい顔立ちとのギャップに、ついにやけてしまう。 すねてる表情を、もっと引き出したかった。クルミの前では人間関係のしがらみを忘れて、おだやかにくつろいでほしい。
「まだやるのぉ。お姉さまはお盛んなの」
 疲れはぬぐいされない。絶頂には快感だけではなくて、疲労もともなった。すこし休みたい気分だった。
「当然ですわ。まさか自分だけいったからって、終わりだなんて思ってませんわよね」
「あははっ」
 クルミは乾いた声で笑う。
 図星だった。自分が行けばそれで終わりだと、決めつけていた。よくよく考えてみれば、リサも身体を持て余してるはずなのだ。クルミは受け身の態度ばっかりで、リサをせめようとしなかった。
 リサの口からは荒い吐息がもれ、クルミの耳朶をしめっぽく刺激する。リサの昂ぶりを鎮めてあげたかった。懸命に自分を奉仕したリサが、単純にいとおしい。この手でリサを絶頂に導きたかった。
「ころ合いでしょうし、おもしろい魔法をご覧にいれて差し上げますわ」
クルミの肉芽はびんびんにみなぎっている。血色のいい色合いで、上むきにそりかえる。
 リサは両手を、クルミの肉芽にかざした。
 リサの手のひらから、体温が伝わってくる。普段はなんてことない刺激にさえ、クルミは敏感に反応してしまう。肉芽がぴくぴくはね、全身に緊張をいきわたらせる。
 リサの手のひらが、ぼうっとまたたいた。
 あわい燐光が室内をぼんやりてらす。
 リサは真剣な表情だった。燐光のてらす顔のなかに、ひとすじの陰りをまとう。
 リサがぶつぶつ呪文をとなえた。これまでに聞いたことのない詠唱だ。リサの手の先に、青色の魔法陣が浮かび上がった。円のなかには六亡星の模様が浮き彫りになり、模様の外側をいくつかの文字が取り囲む。
「なっ、なにしてるの」
 リサの突然の行動に、クルミは戸惑った。
 魔法にもいろんなものがある。火を出したり、傷をなおしたり千差万別だ。リサのことを信用してないわけじゃないけど、魔法を自分にむけられていい気はしない。リサの魔法の成績は優秀だ。クルミの知らない術をたくさん学んでいる。どんなことをされる予想できないのが、クルミの不安をあおる。
「危険なことはしません。最後まで見てのお楽しみですわ」
 魔法陣の輝きが、クルミの肉芽にあつまる。
 クルミは目をみはった。
 心臓が早鐘をうつ。肉芽の神経を内側からくすぐらいているようだった。肉芽のなかに疼きがまきおこり、小さな豆をおかす。絶頂を迎えたばかりの身体にはこたえた。敏感になった場所をせめられ、クルミは悶絶してしまう。肉芽がきゅんっとやきもきする。
「いやあぁぁあっ!なにこれぇ!」
 身体に異変がおきた。光をまとった肉芽が、スライムのように形をかえていく。
 ぶわっとあちこちに膨れ上がったり、元の肉芽らしく小さくなる。ゆるい異変が、しだいにスピードをあげていく。初めはおぼつかなかった形が、すこしずつ輪郭をまとい始める。
「苦労したのよ。文献をあさったり、資料を集めるのが大変でしたわ」
 リサはふぅっとため息をついた。やれやれと大げさに首をふる。態度とは裏腹に、リサの顔はいきいきしている。くちびるをつり上げ、さもおかしそうだ。
「私にぃ、なんの魔法をかけたのぉ?」
「ヒ・ミ・ツ」
 リサは唇に、人差し指をぴんっとたてた。余裕のある仕草に、クルミは非難の眼差しをむけた。
 こっちは切羽詰まってるのだ。身体に怪しい魔法をかけておいて、飄々とかわすのは酷くないだろうか。ちょっと文句をいおうとしたところで、口が半開きにかたまってしまった。
 限界が近かった。息苦しさに、呼吸がままならない。酸素を求めた口が空気をすうけれど、全然みたされない。唇がぱくぱくわなないてしまう。肉芽の変化をつぶさに感じ取り、神経がみだらに熱くなる。肉芽が伸縮するのは、痛いけど興奮をうながされる。身体が焼けてしまいそうだった。
 ひときわ強い法悦がおしよせる。目の前に星がチカチカ輝きをはなち、クルミを幻想的な世界にみちびく。
 クルミは唇をぎゅっとかみしめ、懸命に意識をつなぎとめる。肉芽が暴力的なまでに膨らんだ。
「ふぁぁぁぅっ……」
 のたうち回る肉芽が、形をととのえる。おへそにまで届きそうなぐらいに、長くなっていた。太さを増した肉芽は、表面に血管をうきあがらせる。それは男性器に似ていた。先っぽには割れ目がひくひくうごめき、透明な雫を吐き出す。酸っぱい匂いが立ち上り、クルミの鼻腔を悩ませる。キノコのように傘をひろげた亀頭は、生々しい赤を光らせている。
 クルミの頭は疑問でいっぱいだった。不思議な現象が起こり、クルミの理解は追いつかない。先ほどまで小さかった肉芽は、見る影もなかった。クルミは女だ。女性に男性器がくっつくなんて、それこそフィクションの話でしかしらない。現実にあるとは思いもしなかった。戸惑いのあまり、クルミはパニックに陥ってしまう。こんなの絶対におかしい。股間の肉棒をまわりの人に見られてしまったら、どんなレッテルを貼られることやら。これからどうやって生きていけばいいのか、身体に後遺症はないのか気がおかしくなってしまう。
「男の人の、あれがっ、私には生えてるよぉ」
「成功しましたわ。苦労したかいがありました」
 リサはホッと胸をなでおろした。
 聞きのがせない台詞だった。自分でも驚くくらいに、頭が冴えわたっている。必死に先ほどまでの状況を整理した。おかしくなったのは、リサが魔法を使ってからだ。あれからクルミの肉芽は、クルミの理解をこえた動きを見せた。肉芽が男性器にかわる魔法なんて聞いたことないけど、それ以外に原因を考えられなかった。
「リサの魔法で、クリトリスを……男の人のにかえたの?」
「クルミの言うとおりですわよ」
 リサは得意げに胸をそらした。自信満々にいわれても、答えようがない。リサが言うぐらいだから、この魔法を取得するのは簡単ではないのだろう。同じ魔法を使うものとしては、興味をひかれる。素直にリサを称賛する気持ちにはなれない。自分の身体に男性器が生えるなんて、違和感が満載だった。すぐにでも元の姿にもどしてほしい。
「なおしてよ」
「クルミの頼みとはいえ、聞けませんわね。そのお……おちんちん、立派ですわね」
 リサはぽっと頬を紅潮させた。そんな真顔で呟かれると、こちらまで気恥ずかしくなってしまう。流されそうになる心を叱咤した。ここで折れてしまったら、リサの思うつぼだ。いまの様子では、肉棒を元に戻してくれるのだって怪しいものだ。
「お姉さま、お戯れはやめて」
「あらっ、私は本気ですわよ」
「クリを戻してくれないなら、考えがあるの」
 クルミは努めて、あらゆる表情をおしころした。冷たい視線をリサに送り、自分の不満を露骨にあらわす。
「お姉さまのこと、嫌いになる」
 リサは目をみひらいた。りりしい顔たちが驚きにゆがんでしまう。リサの訴えるような視線に、クルミは罪悪感をおぼえる。言い過ぎたかもしれない。リサを嫌いになるなんて、本心ではなかった。そういえば、リサも降参してくれるかと踏んだのだ。ちょっとした駆け引きのつもり。それなのに、リサは些細なことで動揺してしまった。ちくちく胸が痛む。リサには謝らなくてはいけない。クルミの心もとない言葉で、リサをわずらわせたくなかった。情に流されたクルミが口を開くより先に、リサは態度を一転させた。にまにま笑って、クルミの神経を逆なでした。
「えーん、困りましたわ。私、いじめられてるます」
 芝居がかかったように、リサはわざと泣きまねをする。両手でまぶたをこすり、うつむき加減になった。
 クルミはムッとなってしまう。リサは明らかに状況をたのしんでいる。さっきまでくよくよしていた自分が、間抜けみたいだった。どうやら早とちりだったらしい。リサはしょんぼりなどしていなかった。そうクルミが勝手に勘違いしただけなのだ。自分のお人よしさを反省する。こみ上げた罪悪感が強かったぶん、リサへの不満もおおきくなる。
 クルミは拳をわなわな震わせ、力のかぎり叫んだ。
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長谷川名雪

Author:長谷川名雪
初めまして、長谷川名雪と申します。
シナリオライター・小説家などを目指して修行中です。
このサイトでは主にエッチぃな作品を載せていきます。
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